研究会について
代表理事あいさつ
昨今、社会情勢の変化が激しく、かつ複雑化し、グローバル化による多様化も加速するなか、国内ではこころの病を抱える方、またそこには至らないまでも危機的状況に置かれる方が増えている現状があります。そのようななか、こころの病の回復や社会生活の建て直し、再燃や再発の防止、病とつきあいながらの円滑な地域生活の維持、QOLの向上、さらにこころの病の予防にあたっては、人々の身近に存在する看護師が果たす役割は非常に大きく、これまで以上に期待が寄せられています。そこで看護師は、従来の看護ケアにとどまらず、より効果的で有用な理論やスキルを積極的に看護に取り入れ発展させていくことが重要ではないかと思います。
そこで、看護への導入が可能で有効な理論やスキルとは何かを考えると、認知行動理論と、それをベースに展開される認知行動療法に行きつきます。これまでに認知行動療法は、うつ病をはじめ、統合失調症、不安障害、パーソナリティ障害、アルコール依存症、発達障害、PTSD、双極性障害等の多くの精神疾患で効果が検証され、最近ではがんや生活習慣病等の一般身体疾患への適用、教育や職域におけるメンタルヘルスの保持・増進への活用がされています。国内では平成22年の診療報酬改定で「認知療法・認知行動療法」の評価が新設されましたが、算定件数が増えないことなどから、平成28年の改定では一定のトレーニングを受けた看護師がCBTを実施した場合にも算定できるようになりました。これは看護師がCBTを実施することを公的に認める画期的なもの、という捉え方ができます。しかし一方、算定の条件が厳しく、多くの患者にCBTを提供できない現状を変えるには至らない、とも予測されます。
このような背景のなか、今、こころの病を抱えた方や危機的状況にある方への最善のケアのために、看護師が認知行動理論、そして認知行動療法をどのように看護ケアに取り入れ発展させていくかを積極的に議論すべきときがきていると考えます。それと同時に、その最善のケアに必要な認知行動療法の効果の蓄積、さらにその効果を看護師が実践につなげる上で必要な知識やスキルを身につけるための教育研修体制の構築、看護師の実践の質を保証するためのシステム構築が不可欠となってきています。
そこで、2011年7月に任意団体として発足し運営してきた「看護のための認知行動療法研究会」を、2016年10月3日に一般社団法人とし、公的な立場から、これらの目的を実現する団体として新たにスタートを切ることにいたしました。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
看護のための認知行動療法研究会 代表理事 岡田 佳詠
理事の紹介(五十音順)
- 岡田 佳詠
- 代表理事
- 国際医療福祉大学 成田看護学部 教授
認知行動療法の臨床や研究、教育に携わって、20年以上たちます。昨今の認知行動療法の効果の蓄積と適用範囲の拡大には驚くものがあり、看護への効果的な適用についても検討を重ねています。また、女性うつ病患者さんへの集団認知行動療法を長年続けていますが、今でも毎回の患者さんからの学びは大きく、新鮮な気持ちになります。患者さんの回復する様子をみるたびに、認知行動療法の素晴らしさを実感しています。
- 北野 進
- 副理事
- 東京都立松沢病院 看護コンサルテーション室 看護師長
- 精神看護専門看護師
私は所属先で統合失調症の患者さんと関わることが多いため、この研究会における私の担当または専門は統合失調症患者さんへの認知行動療法です。臨床では日々難しい場面やケースが多く、関わりに苦慮することがあります。認知行動療法を学び、実践する経過で、単純な苦慮ではなく興味を持って悩めるようになりました。
この研究会でともに活動しましょう!そして専門職として成長していきましょう!!お待ちしております!!!
- 石川 博康
- 東京都立広尾病院
- 精神看護専門看護師 精神看護認定看護師
- 保健師 精神保健福祉士
これからの地域ケアでさらに継続、工夫する看護技術は?
退院支援カンファレンスでも、CBTについて話し合われます。
病院から地域へとCBTの考えを共通認識とすることで、専門職の連携も高まります。
さぁ、病院から地域へCBTの継続を!!
継続看護としても看護のCBTがつながるために、工夫を続けていきたいと思っております。
- 白石 裕子
- 国際医療福祉大学 福岡看護学部
- 教授
看護実践におけるCBTに関する翻訳書を出版して10年ほどになります。臨床心理士としてのCBT実践は行っていましたが、看護師としての実践はまだそれほど長くはありません。
しかし、実践によってCBTが対象の変化をもたらすためにいかに有効な技法であるかを実感できるようになりました。
これを皆様方にもぜひ体感していただきたいなと思っています。
- 中野 真樹子
- 合同会社エムエムIMS
- 笑む笑む訪問看護ステーション
- 精神看護専門看護師
地域の中で、学校、企業、自宅等でCBTカウンセリングをしています。生活の中での困りごとを看護ならではのCBTでケアしています。患者様に対して、常に謙虚に、誠意を持ってアセスメントし、必要なCBTスキルの選択し、パッケージを作成することを心がけています。地域でのCBT活動の仲間も募集中です。お気軽にオフィスにいらしてください。
- 長井 麻希江
- 株式会社 アモール
- CBT推進リーダー/社内カウンセラー/訪問看護師
看護師/公認心理師
認知行動療法は、心の病気のみでなく体の病気の治療にも活用され、また病気を持っていない人の健康増進や幸せのためにも活用されるようになりました。
今後、看護師による実践の質の向上や研究が進み、多くの人に認知行動療法が届くことを願って、微力ながらお役に立てればと考えています。
- 則包 和也
- 香川県立保健医療大学
- 教授
認知行動療法の知識と技術の共有が、私たちの看護に集約されて、精神疾患を持つ人々への効果的な援助になることを目的として、本会の理事を務めさせていただきたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
- 矢内 里英
- 訪問看護ステーションぽしぶる
- 精神看護専門看護師
認知行動療法については、セミナーやワークショップに参加したり、コツコツと本を読んだりしながら学んできました。
まだまだ勉強中の身ですが、認知行動療法のエッセンスを日々の看護に取り入れることで、「看護の幅がひろがった!」と実感しています。
さらに皆さんと一緒にステップアップしていけたらと思っています。どうぞよろしくお願いします。
- 吉永 尚紀
- 宮崎大学医学部看護学科
- 教授
- 看護師・保健師・公認心理師・Certified CBT Therapist
(Academy of Cognitive and Behavioral Therapies, USA)
認知行動療法はスポーツと同じで、座学(知識)だけでの習得が難しく、適切な指導者・経験者からアドバイスを受けながら実践の積み重ねる必要があります。
本研究会への参加を通して、認知行動療法の実践に取り組んでいる(あるいは悩んでいる)仲間を見つけ、「なんちゃって認知行動療法」「認知行動療法『的』アプローチ」から、一歩前に踏み出してみませんか?
- 田上 博喜
- 宮崎大学医学部看護学科
- 助教
メンタルヘルスに問題を抱え支援を必要とする方が増える中、認知行動療法のニーズはますます高まっています。そして、病院から地域まで幅広く活躍している看護師が認知行動療法を学ぶことで、多くの人に認知行動療法が届くようになることが期待されています。
当事者の方とかかわるたくさんの機会に認知行動療法を活用していけるよう、ぜひ一緒に学んでいきましょう!